14歳のみなさんに向けて、「お金の話」を語っていきたいと思います。
「14歳に向けて」と言うと、「まだ働いてもいない14歳には、お金の話なんてする必要がないんじゃないか」という声が聞こえてきそうです。
ところが、決してそうではありません。
早いうちからお金について学び、考えることには大きな意味があります。
例えば、お金には「社会の未来をつくる」という役割があります。
僕たちはモノやサービスを買うことを通じて、「好き・嫌い」の意思表示ができます。
多くの人から「好き」を集められた会社は、社会の中で影響力を増していく。
逆に、ほとんど誰からも「好き」を集められなかった会社はやがて社会の中から姿を消していく。
つまり、僕たちが「何にお金を使ったか」というのが、社会の未来を決めてしまうのです。
もし、14歳のうちからこうした視点を持って、応援したい商品や会社に対して、お金を使うことができれば、みなさんが大人になったとき、社会は今よりもっと素敵なもので溢れていくでしょう。
今、お金について知るかどうかは、みなさんの未来を大きく左右する。
大げさではなく、心からそう思うのです。
お金を扱う仕事をし始めて30年が経ちますが、お金について考えることで、仕事や社会、そして人生そのものを広く深く見渡すことができるのだと、実感しています。
お金は僕たちに「フラットであれ」という教訓を教えてくれます。
お金は一部の人の元に集まって貧富の差を生むこともありますが、本来は、水のようにしなやかに流れる特性を持っています。
社会の隅々にまで行き渡って、循環を生み、素敵な未来をつくる夢を応援する。
そんなパワーも秘めているのです。
考えてみてほしい。
君が毎日当たり前に使っているもの、例えば家にあるテレビを思い浮かべて、そのテレビをイチから自力でつくることはできるでしょうか?
設計図を書いて、部品のすべてを調達して、組み立てて、さらに電波をキャッチするための通信環境も自分でこしらえる。
それを「全部自分一人でできる」と言える人は、おそらくいないでしょう。
でも、それを悲観する人もいません。
テレビを自力でつくることはできない代わりに、僕らは他人がつくってくれた完璧なテレビを手に入れることができるからです。
お金を使って買えば、すぐにでも自分のものになるのです。
人類を発展させた発明品の多くは、その前にお金が誕生していたから生まれたと言ってもいい。
もちろん、お金がなかった時代にも他人のために一生懸命になれる人はいたはずだけれど、「お金に交換できる」という約束がある世の中になったから、熱心に努力する人、才能を発揮する人が飛躍的に増えていった。
つまり、お金の“人の努力や才能を引き出すパワー”によって、文明社会の発展は加速したのです。
そう考えると、お金はエライですね。
『14歳の自分に伝えたい「お金の話」』マガジンハウス