2021.03.06
人類がチンパンジーと大きく違うところは2つある。
直立二足歩行をすることと犬歯が小さいことだ。
化石記録を見るかぎり、この2つはほぼ同時に進化したようだ。
それは約700万年まえ、つまり人類が他の類人猿と分岐したときである。
したがって、この2つの特徴が、人類というものを誕生させた可能性が高い。
直立二足歩行の利点はいくつか考えられるが、その中の一つは「両手が空くので食料を運べる」ことだ。
しかし直立二足歩行は、人類以前には進化しなかった。
その理由はおそらく、直立二足歩行には走るのが遅いという、重大な欠点があるからだ。
この欠点が他の利点を上回っていたために、直立二足歩行は進化しなかったのだろう。
いくら食べ物を手で運べても、運んでいる最中に肉食獣に食べられてしまっては元も子もないのである。
しかし、地球の歴史上初めて、人類では直立二足歩行の利点が欠点を上回ったので、直立二足歩行が進化した。
そしてそれは、犬歯が小さくなったことと関係している可能性が高い。
チンパンジーは多夫多妻的な群れをつくる。
群れの中には複数のオスと複数のメスがいる。
そのため、メスをめぐってオス同士の争いが起きる。
このとき使われるのが、牙だ。
ところが人類には牙がない。
あまりメスをめぐって争うことがなかったのだろう。
人類はチンパンジーより平和な生物なのだ。 『残酷な進化論 なぜ私たちは「不完全」なのか (NHK出版新書)』より