2021.02.08
「悠々(ゆうゆう)として急げ」
という言葉がある。
この「ゆっくり、いそげ」と同じラテン語だが、こちらの訳も深みがある。
不世出(ふせいしゅつ)のアマチュア・ゴルファーと言われた中部銀次郎や、作家の開高健が好んだ言葉だ。
二人とも、「悠々として急げ」という題名で本も出版している。
ゴルフはスピーディなプレイをしなければまわりが迷惑する。
だから急がなければならないが、しかし、悠々として、王者のごとく急ぐこと。
余韻の残る王者のゴルフをめざすなら。
人生は結局、どっちの道を行っても同じ、どの列に並んでも同じ、と肚をくくること。
間違ってもうろたえて、人数が少なそうな列に並び変える、などということはしてはいけない。
また、開高健は、
「漂(ただよ)えど沈まず」という言葉も好んだ。
パリ市の紋章に書かれているラテン語だという。
長く続く歴史の中で、パリ市は戦争に翻弄され続けた。
ある時は他国に占領され、あるときはテロ攻撃にさらされた。
しかし、まさに「漂えど、沈まず」だ。
人もまた、かくのごとし。
世の中が騒然とすればするほど…
異常事態になればなるほど…
「漂えど、沈まず」
王者のごとく…