儲けるためには20年はかかる。
あの堀江貴文氏ですら、ライブドア事件を起こしたのが創業から10年くらい、ソフトバンクの孫正義氏などは1980年頃から40年近くもやっている。
もし会社をやるなら、20年続ける覚悟が必要だということだ。
実際、あのAmazonですら、利益を出していないと投資家たちから批判ばかりされてきたので有名だ。
当時のジェフ・ベゾスは「儲けは将来への投資に使っている」と苦しい言い訳をしていたが、本人だってGAFAの一角を形成する企業になるという確信は持てていなかったのではないだろうか。
経営者というのは、一度始めたからには儲かるかどうかわからないけれど、しようがないからやっている。
他にやることはないし、もう会社をつくってしまっているのだから、途中で止めると損しか残らない。
だから、やり続けるのだ。
そしてその中で、大半の会社は当初ビジネスであるプランAではなく、仕方なく途中で始めたプランBで成功している。
それもプランAがダメならプランBで勝負するというような美しいストーリーではなく、プランBというのは半ば強制的に起こるしかない。
プランBがなければ、倒産してしまうからだ。
ソニーだってパナソニックだって、幾度となく訪れた危機をプランBで突破している。
ベゾスはもともとコンピュータの人だから、AWSというプランBを持っていたかもしれないが、いずれにしてもプランAのEコマースだけでは今のような利益を叩き出すのは不可能だった。
法人がそうであるなら、個人も同じようなもので、人間もプランBで成長することが多い。
経営者の多くはやるしかないからやるだけで、「おもしろくなってきたぞ」と自分を騙(だま)しながら、なんとか続けている。
20年も続けると、そのうちにお金になってきて、「ああ、間違っていなかった。よかったんだ」といい出して、さらに続けていって70歳くらいになると、『日本経済新聞』に「私の履歴書」を書き始め、「当初からこういうプランで、こうした目的でやろうと思っていた」とか大真面目にいい始めるのだ。
経営者というのはみんなそうで、いいことしか覚えていない。
都合の悪いことは全部忘れる。
自分で自分の成功ストーリーをつくって、自分を洗脳しているのだ。
そうでもしないと、取引先も、友だちもいなくなってしまうから。
たとえば、毎週1回誰かと飲んだとして、飲みの席で「いかに失敗したか」「いかに苦しいか」ばかりを話している経営者と付き合いたいと思う人はいるだろうか。
どんなに苦しくても、そこそこうまくいっている話とか、軽めの失敗をいかに乗り越えたかをあちこちで話すうちに、それが真実だと思い始める。
自分が相手に話すことを一番大きな音で聞いているのは当の自分だ。
物理的に自分の声というのは自分に一番大きく聞こえている。
人は相手に話しているつもりが、自分を教育しているのだ。
だから、経営者というのはネガティブなことをほとんどいわないし、ネガティブな人に近づきたくない。
私もネガティブなことを聞くのが嫌いで、会社の悪口であれ、誰かの悪口であれ、3分くらいであれば聞いていられるけど、30分も1時間もいわれたら、うんざりする。
というか私の場合は、うんざりする前に逃げ出すようにしている。
たとえトランプ大統領の批判であっても、いつまでも付き合って聞いていると、具合が悪くなってしまうのだ。