2020.10.10
こういう教えがあります。
「小人は小善をもって益なしとして為さざるなり。小悪をもって傷(そこな)うことなしとして去らざるなり」
小人というのは、普通の人というふうに思ってください。
この言葉は中国の儒教の経典である『四書五経』の中の一つ、『易経』と言う本の中に出てきます。
つまり、普通の人は「小善をもって益なしとしてなさざるなり」。
ちょっとしたいいこと、いいことには違いないけれどたいしたことがないというのが「小善」です。
空き缶を拾うとか、掃除をするとかいうことです。
そういう小善をしたからといって、自分に益がない、自分の人生が急によくなったりするわけじゃないといってやらない。
一方、そういう人は「小悪をもって傷(そこな)うことなし」。
ちょっとした悪いことをしたからといって、自分の人生が傷つけられたり、損傷したりするわけじゃないので「去らざるなり」、やめないという意味です。
たとえば、タバコを吸われる方がタバコを吸って吸い殻をポイッと捨てる。
確かにタバコの吸い殻を捨てたからといって、急に人生が悪くなるわけではありません。
しかし、捨てる人は絶対に拾いません。
自分がタバコを捨てながら片方で拾っているという人をみたことがありません。
捨てる人は捨てる一方です。
また、拾う人は絶対に捨てません。
今朝拾っておいて、午後に捨てると言う人はいません。
拾う人は捨てない、捨てる人は拾わない、この差は大変大きなものです。
しかもそれが三年、五年、十年とつながってくると、もっと大きな差になってくるのです。
一日一日、今日と明日とはたいした差がなくても、やがてそれは一年、二年、三年という積み重ねになったとき、大変大きな差になるのです。
この積み重ねそのものが人生です。
自分の人生を急に何かで変えようとしても、悪くなるほうには簡単に変わりますけれど、よくするほうにはそう簡単に変わるものではありません。
やはり「よい習慣」をつけていく以外に方法はないのです。
そういう姿勢が、ご自身の取り組んでいる仕事にちゃんと現れてくると私は確信しています。
ご商売をされている方はお店の雰囲気に現れてきますし、物をつくっていらっしゃる方は物づくりにもそれがきちっと現れてきます。
イエローハット創業者、鍵山秀三郎氏