2020.09.15
塚原卜伝のこんなエピソードがある。
『技量優秀で、そろそろ免許皆伝を与えようかと、卜伝が思っていた高弟がいた。
あるとき、この高弟が馬の後ろを通ったところ、馬がいきなり後ろ足で蹴り上げてきた。
周囲の人たちが危ない、と思った瞬間、この高弟は、ひらりと身をかわしたのである。
それを目にした人たちは、「さすが卜伝先生の高弟だ」と、口々に称賛した。
ところが、この話を聞いた卜伝は違った。
「未熟者め」と言って、免許皆伝を与えなかったのである。
そして、ある日のこと。
卜伝が歩いていて、馬に出くわした。
高弟と同じ状況である。
卜伝はどうしたか。
馬のそばを避け、遠く迂回(うかい)して、何事もなく通り過ぎていったのである。
それを見て、なぜ卜伝が高弟に免許皆伝を与えなかったか、みんなは納得した。』(武道に学ぶ「必勝」の実戦心理術)より