悪口が結局自分に返る
2020.05.04
お釈迦さまの一行が、竹林精舎(ちくりんしょうじゃ)に滞在していたときのこと。
この地域で多くの信者を抱えているバラモンの地位にあったアッコーサカは、自分の信者が、次々にお釈迦さまの教団に宗旨替えしていくのを、とても腹立たしく思っていました。
しかも、自分の身うちである兄の妻がお釈迦さまに宗旨替(しゅうしが)えしてしまったことや、その妻を呼び戻そうと、お釈迦さまのもとに出向いた兄までもが、自分を見限りお釈迦さまの教団に出家してしまったことに、不満を募らせていました。
ある日、アッコーサカは我慢の限界とばかり、お釈迦さまのものへ怒鳴り込んだのです。
「ゴータマよ。よくも私の教団の信者を横取りしたな!
私の兄夫婦をうまく丸め込んで、自分の信者にするなどとんでもない。
おい、ゴータマの弟子たちよ。
お前らの崇拝するゴータマは、ブッダとは名ばかりとんでもない男だぞ!」
と、お釈迦さまの弟子たちに向かって次々と悪口を浴びせました。
お釈迦さまは、弟子たちが彼を止めようとするのを制し、言い終わるのをじっと待ち続けました。
ひとしきり悪口を言い終えたアッコーサカに、お釈迦さまが尋ねます。
「あなたはお客さまに、食事のおもてなしをすることがありますか」
「もちろんあるとも」と、アッコーサカ。
さらにお釈迦さまが尋ねます。
「ではもし、お客さまがその食事に手をつけなかったら、その食事は誰のものになりましょうか」
アッコーサカは間髪(かんはつ)を入れず、
「食べてもらえなければ、それは私のものとなるほかはないだろう」と答えます。
その答えを待っていたようにお釈迦さまは言いました。
「それでは私は、今日あなたが並べ立てた数々の悪口をいただかないことにしましょう。
そうすれば、その悪口はあなたのものになるほかないですね」
さらにたたみかけるように、続けます。
「あなたに悪口を言われ、怒りにまかせて私が言い返してしまったら、それはあなたと食事をともにするのと同じことです。
私や私の弟子たちは、決してあなたと食事を供(とも)にすることはないでしょう」
アッコーサカは、さんざん並べ立てた悪口が、結局自分に返ってきたことに気づかされました。
(相応部経典)より

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