2019.12.28
日本航空の会長に就任した際、私はすべての従業員に向けて、次のような言葉を紹介しました。
…新しき計画の成就は、ただ不屈不撓(ふとう)の一心にあり。さらばひたむきにただ想え、気高く、強く、一筋に…
これはインドでヨガの修行をして悟りをひらき、日本でその思想と実践に基づく生き方を伝えた哲人・中村天風の言葉で、かつて成長を続けていた京セラにおいて掲げたスローガンでもあります。
私はこの言葉をあらためて、日本航空の全社員に向けて紹介したのです。
このなかでも大切なのは、「気高く」という言葉です。
美しく気高い心を根幹にもっているからこそ、ひたすら強く揺るぎのない「思い」をもつことができる。
何が何でも成し遂げるという強烈な思い、どんな苦境にも負けずに進もうという揺るぎない意志が、事を貫徹するためには必要です。
そういう思いのもと、かかわる人たちが一丸となって最大限の努力をなしたときに、事は成就する。
その根幹となるのも、美しき利他の思いなのです。
何事をなそうとも、いかなる運命を歩もうとも、私たちが生きているかぎり、めざすべきものは、他によかれかしと思い、他のためによきことをなす「善なる心」です。
それは、「真・善・美」という言葉でいい表すことのできる、純粋で美しい心といってもよいでしょう。 稲盛和夫