2022.07.06
鉄鋼王といわれたカーネギーが成功の秘訣を聞かれた時に、こういうことをいいました。
「それは、まず貧しい家に生まれることである。
というのは、この社会の荒波に身を投ずるにあたっては、やはり自分の力で泳ぎ切る覚悟がなくてはならない。
最初は1個の浮袋、1個の救命具、一粒の食物といえども携帯せずに進まなくてはいけない。
さもないと依頼心が起こってくる。
大切なのは独立心だが、貧しい家の子は、最初からそういう境遇にあるわけで、むしろ金持ちの子ははなはだ不幸だといえる」
貧困な移民の家庭の子として、小僧から身を起こし、巨万の富を築きあげたカーネギーが自分の体験を通してつかんだことだと思う。
実際何事をなすにあたっても自主独立の心を持たず、他をあてにし、他に依存していたのでは真の成功はおぼつかないだろう。
個人はもちろん、1個の会社でも、他の金をあてにし、他の技術をあてにしてみずからたのむところが少ないようでは堅実な発展はあり得ない。
一国にしても同様で、他国の金、他国の資源、他国の善意といったものに依存して国家の存立をはかろうとすれば、その基盤はきわめて脆弱(ぜいじゃく)なものになってしまうだろう。
明治の先覚者福沢諭吉は、「独立の気力なき者は国を思うこと深切(しんせつ)ならず」と喝破(かっぱ)している。
独立心なき者が何千人、何万人集まったとて、それはいわゆる烏合の衆にほかならない。
国だけでない。
会社でも社員に独立心がなければ、同じことである。
独立心の涵養こそ、その会社、その団体、その国家の盛衰を左右する重大なカギであることを指導者は知らなくてはならない。
『指導者の条件』PHP文庫