社長ブログ

罪悪感

2022.06.25

車内では楽しい話題が続き、天気にも恵まれました。

熊本市に近づくころ、その薬剤師の方は真顔になって、こんな質問をされました。

「実は私は今、薬局を続けるべきかどうか悩んでいるんです」 とおっしゃるのです。

「それはまた、どうしてですか?」 と私。

「いろいろな勉強をしてきて、薬というものが、本当に人に役立っているのか、と思うようになりました。薬を売れば売るほど、人の体を壊しているような気がして...」

世の中にこんな人もいるんだ、と私は嬉しくなりました。

「その相談をしたかったんです。

人生上の大事な問題ですから、今日一日、店に出るか出ないかは、大した問題ではなかったんです」 と、その方。

「なるほど、それで今日、この車にご一緒されたのですね。私を送るだけでしたらもったいないと思っていたのですが。で、薬局の方は、やめることも考えているということですか?」

「もちろんそうです。薬害とかもありますし、薬というものが本当に役に立つものなのか、と」

そんなやりとりがあって、最終的に私がした提案は次のようなことでした。

「薬局に薬を買いに来る方は、体の不調や痛みを抱えている人ですよね。

その人たちのとりあえずの、対症療法薬として、薬を売るという立場は肯定してもよいのではありませんか。

そして、そこに罪悪感のようなものがあるなら、こうしてみるのはどうでしょうか。

それは、今までの薬局の薬剤師としての仕事の10倍の量を、世のため人のため、社会のために、貢献するということに費やす、ということです。

そうすれば、今までの仕事は、自分の人生の10分の1でしかなくなるから、自己嫌悪や罪悪感は、ずいぶん薄くなるのではありませんか。

しかも、“仕事”はそのままですから、生活とか収入とかの部分もクリアできる。

ただし、今までの10倍ものエネルギーで生きるわけですから、人生は大変に過酷なものになります。

それができれば全て解決だと思いますが」

その薬剤師の方は、深く深くうなずきました。

「投げかけるものがマイナス100あっても、その結果、じゃあ200のプラスを投げかけようと決意をし、実行したら、結果的に神は喜んでいるんじゃないか、と小林さんの文章にありましたね。私もその生き方でいきます」

美しい笑顔でした。

そこから始まった具体策も、これまた楽しいものになりました。

それは、「こんな生き方やこんな考え方の人が、こんな病気になるみたいだ」というコピー資料を、とりあえず10種類くらい作ってみよう、というもの。

“現場”におられるのですから、そういう“統計的”な推論を得やすい立場ではあるのです。

私たちのやりとりを聞 いていた、運転をしてくださっていた方は、ポツリとこんなふうに言いました。

「そういうふうな解決方法をとったら、クヨクヨしたり自分を責めたりしないですみますね。 いつでも、それが10分の1になってしまうような、プラスの投げかけ10倍を考えていった ら.. .」

車の窓に、ハラハラと木の葉が舞っています。

やわらかな秋の日射しの中で、車の中は春のような暖かさに包まれていました。  小林正観



今日も生きてることに感謝♬