社長ブログ

能力を失うことによって進化する

2022.03.19

ヒトは能力を失うことによって進化しました。

たとえば、ヒトはほかの哺乳類とは異なり無毛です。

ゾウやカバなど例外的な大型動物をのぞけば、体毛を持たない動物は数えるほどしかいません。

全身を覆う毛は、体温や水分の保持に必須ですから、体毛を持たないヒトは生物界の弱者です。

ところが偶然にも、ヒトは服を作ることによって寒さをしのぐだけの知能を持ち合わせていました。

この知的能力は、単にアフリカ大地のみならず、サルが棲息できないような北極圏にまで生息地を拡張することを可能にしました。

記憶力もそうです。

ヒトの記憶は不正確で消えやすく、ときに混線さえします。

一方、 チンパンジーの短時記憶は驚異的です。

いや、原始的な動物ほど記憶は強固です。

しかしヒトは、高精度の記憶能力を捨て、代わりに想像力と創造力を手に入れました。

『ネイチャー』誌(2011年3月)に、チンパンジーとヒトの遺伝子を精査した論文が発表されました。

スタンフォード大学のマクリーン博士らの研究です。

ヒトはチンパンジ ーに比べ510個の遺伝子が足りないといいます。

なかでも脳の前頭葉を構築する遺伝子の欠失は象徴的です。

リミッターを免れた大脳皮質の拡大化が、ヒトの知性の源泉かもしれません。