2022.03.05
江戸時代の剣豪、千葉周作が舟で夜釣りに出かけた時のことです。
釣りに夢中になっているうち、いつのまにか帰る方角を見失ってしまいました。
一生懸命目を凝らすのですが、たいまつの明かりが届く範囲しか見えず、案内の船頭も途方に暮れてしまいました。
それでもなんとか船宿に戻ることができ、一同ほっと一息をついたところへ、海に慣れている老人がやってきて船頭をこう叱ったといいます。
「海辺に長年住みながら何ということだ。
なぜたいまつを消さなかったのだ。
たいまつがあると近くは見えても遠くは見えない。
火を消せばどんな闇夜(やみよ)でも里はわかるものだ」
これを聞いて周作は、目の前ばかりを明るくしていると、遠くは見えなくなるものだということを教えられたということです。