2022.02.14
昔、有難屋吉兵衛という男がいた。
この男、すこぶる楽天家であり、かつて不平不満を言ったことがなかった。
その吉兵衛がある日、急いで外出しようとしたところ鴨居に頭をぶつけ、饅頭のようなこぶをつくった。
しかし、痛いとも言わず、両手でこぶをおさえながら「有難い、有難い」と感謝するばかりだった。
これを見ていた隣人は怪しんで尋ねた。
「吉兵衛さん、あんたはこぶができるほどの怪我をしながら、何が有難いのじゃ」吉兵衛さんは答えた。
「有難いですよ。頭が割れても仕方がないのに、こぶぐらいで済んだんですもの。」