2022.02.13
彼女は聡明で成績もよく、学校の先生になりたいと思っていました。
でも、出征した父親が戦死し、中学を卒業すると働きに出ることになりました。
貧しい家を支えるため、師範学校に行くことをあきらめなければならなかったのです。
彼女が働きに出る前の晩、祖母は彼女にこう言って聞かせました。
「人さまの持っているものを見て、うらやましがったり欲しがったりしてはいけないよ」
すると、聞いていた祖父がぽつりとつぶやきました。
「こんな若い子にうらやましがるな、だなんて酷だ。そういう気持ちにならないわけがない。うらやましがって当たり前だよ」
「2人は少し間を置いて、もう一度同じことを繰り返します。
祖母は「うらやましがってはいけない」、祖父は「うらやましがって当たり前」と。
彼女は2人のこの言葉が、人生を生きる上でたいへん役に立ったと言います。
「おばあさんの言葉だけだったら、私は自分を『うらやましがるべきではない』と厳しく律し、つらい思いをしながら生活することになったでしょう。
おじいさんの言葉だけだったら、自分を甘やかし気ままな人間になっていたでしょう。
自分の中に、相反する2つの声がいつも聞こえていたからこそ、私は何が本当に必要かを考え、物事の中庸を取ることができたのです」
人と比べて心がかき乱れたときは、みなさんもこの「2つの心」を思い出しましょう。 人は人、自分は自分。それでいい。
そう思う気持ちがきっと芽生えます。