2021.12.06
明末の幻の名著「酔古堂剣掃(すいこどうけんすい)」の中に、心に響く珠玉の言葉があります。
『君と一夕話(いっせきわ)、読むに勝(まさ)る十年の書』
一夕話とは、ある晩(ばん)語られた話のこと。
『十年かけて勉強したり、読んだ書より、君と一晩語りつくしたほうがずっといい』
この人とまた逢いたい、そして一晩語りつくしたい、そう思わせる友や先輩、師が近くにいる人は幸せです。
その一夕が、珠玉の時間となります。
気品と、情緒、趣(おもむき)があり、こころひかれる、「床(ゆか)しい人」との時間…
何か集まりがあったとき、「あの人はどうしている?」、「連絡してみようか?」、と話題にのぼらない人は寂しい。
あいつとだけは、一緒にいたくない、暗くなり、嫌な心持になる、ごめんこうむりたい、といわれる人にだけはなりたくない。
一晩語り合いたい、ゆかしい人は、しみじみと語りかけてくれる。
そして、別れたあとまたすぐに会いたいと思わせる、しみじみとした余韻が残る。
まさに、良寛さんのいう「愛語」です。
良寛さんは、私は貧しい一介の修行僧なので、人にあげられるもがが何もない。
だから、せめて人の心を、温かくするような、ほっこりできるような、愛語という「言葉」を贈りたい、と。
口から出る言葉すべてを…
しみじみと語りかけることができる人であり続けたい。