2021.09.16
「神さまはきっと凡人を愛しておられるにちがいない。だから神さまは、凡人をたくさんつくっておられるんだ」
これは、アメリカの第16代大統領であったエイブラハム・リンカーンの言葉である。
なかなかいい言葉だ。
「キリスト教では、神が人間をつくったと考える。
神のつくった人間には、特別な才能に恵まれた人もいれば、平凡な普通人もいる。
凡人が多数で、天才はごくわずかだ。
そして、常識的には、特別な才能を付与された人間が神にかわいがられた人だと思 われている。
べつだんこれといった理由はないが、非凡な人間のほうが神さまの寵児のように思えるのだ。
多数の凡人は、神さまの粗製乱造の製品のように受け取られる。
それをリンカーンは引っくり返したのである。
神さまは、たくさんいる普通の人間がかわいくてならないからこそ、好きだからこそ、こんなにたくさんおつくりになったのだ――。
彼はそう言っている。
この考え方、わたしも同感である。
そうなんだ。
わたしたちはなにも偉くなる必要はない。
ただの人でいいのだ。
ただ生きている――それだけでいいのだと思う。
なんの代わり映えもしない、平凡な、普通に生きている人――。
その人を神さまが 愛しておられるのだと思う。
『捨てちゃえ、捨てちゃえ (PHP文庫)』より