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社長のつぶやき

「一人前の寿司職人」

2020.12.18

一人前の寿司職人になるためには下積み修行を10年ほど経験する必要があるという話をよく耳にする。

起業家であるホリエモン(堀江貴文氏)は、このような「世間の常識」を批判する。

ホリエモンの主張によれば、センスと経営能力さえあれば1年もしないうちにプロの寿司職人を養成できるという。

経済学者からすると、ホリエモンの説に分があるように思えた。

フランスのパリで寿司職人をしている友人に、どちらが正しいと思うか質問をしてみた。

まずホリエモンの言い分に理解を示し、次のように回答した。

「確かに、条件さえそろえば、技術的には可能」

しかし、技術以外の2つの要素が重要だと言う。

第1に、うまい寿司を作るには良いネタを仕入れる必要がある。

ネタの良し悪しはネタが入ってくるまでわからない。

さらに、良いネタを見分け、なるべく安く仕入れることが必要だ。

経験がない人でも、センスが良い人は見分けることが可能かもしれない。

しかし業者は良いネタを隠し持っていて、昔からの取引がある名店にしか売らないそうだ。

要するに人間関係がモノを言うわけである。

第2に、寿司職人にはコミュニケーション能力や話芸が求められる。

とりわけ高級店に来てカウンターに座る客は、寿司を食すためだけに来ているわけではない。

社会的にも一定の地位につき、人生の荒波を泳いできた客が来店する状況を想像すると良い。

貫禄のある寿司好き紳士が、世間話や寿司のあれこれをネタにして話しかけてくるという。

客がどのような人物なのかを観察しつつ、相手を楽しませ愉快にさせる受けこたえをする。

なじみ客でも日によって機嫌の良し悪しがあるので、油断はならない。

一方で、神経を集中させながら寿司という名の芸術品を作るのである。

うまい寿司、そして愉快な会話も手品のように提供し、客を納得させる。

これらすべてを身につけているのが「一人前の寿司職人」なのだ。

寿司職人は寿司を作る芸術家であると同時に、経験に裏打ちされた「人情」のエキスパートなのだ。

もう一度考えてみよう、20歳台の若者が50歳を過ぎた食通紳士の相手ができるのか?

友人の結論は次の通りだ。

「センスが良くても、10年近くかかるだろう」

市場参加者が人間である以上、入門者向けの教科書には描かれない力学が働く。

「人情」を知らねば現実経済は見えてこない。

この要素を深く考えることができる者が「一人前の経済学者」である。

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