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社長のつぶやき

「運」「鈍」「根」

2019.10.21

私が講演でよく使う言葉がある。

「運」「鈍」「根」。

成功の秘訣は、この3つにあるという話をよくするのだ。

私は、自分は運がいいと思っている。

そして、運というのは、生まれながらに総量が決まっているとも思っている。

すごくいい運を持っている人、そうでもない人、すごくいい運を大量に持っている人、案外量が少ない人。

いろいろなタイプがいるけれど、それは仕方のないことだ。

ただ、どっちにしてもひとつ言えることがあって、それはすごくいい運は使わないで温存しておくべきということだ。

たとえば、私は電車を待つとき、ホームの端には絶対に立たない。

なぜかというと、もしも後ろから押されたとしても、100分の1秒くらいのタイミングで、ふっとかわしてしまうからだ。

なにしろ私は運がいいと(と、信じている)結果として、後ろから私を押そうとした人間のほうが、コロッとホームから線路に落ちてしまう。

そして、私は生き残る。

そのときに私は大量の運を消費することになる。

命の運だから、かなり大量だ。

でも、そのときに運を使わなければ、まだ残っている運を使ってもう一度ビジネスで成功するかもしれない。

そんな感覚だ。

私の感覚では、大量に持っているいい運を、まだ3割程度しか使っていない。

命に関わる事故や病気にかかっていないというのが、その理由だ。

そして「鈍」。

これは、基本的にものごとを覚えていないということ。

怒ったことも、うまくいったことも、総じて覚えていないというのは、案外重要なことだ。

たとえば国宝級の工芸職人が自分の仕事に対して、

「まだまだ満足していない」

と口にすることがある。

高みを目指す崇高な職人魂と捉えることが多いが、私は彼らが自分のした仕事を単純に忘れているのではないかと思う。

忘れているから満足しない。

だから、常に次の作品でベストを目指そうとする。

失敗したときも同様だ。

忘れてしまうからいつまでもクヨクヨせずに、次に進める。

つまり、記憶がないこと、鈍いことが正解なのだ。

失敗してもクヨクヨしない。

成功しても満足しない。

それが次の一歩につながる。

この「不注意」ともいえる鈍感力も発達障害でもたらされているとしたら、非常にラッキーなことだろう。

最後の「根」。

これは根性という意味ではなく、単に「ハマる」ということ。

一度集中したら、その行動を止めることができない状態、つまり「過集中」ということだ。

アスリートには延々と練習を続けられる“練習の虫”がいるが、あれは努力ではなく、好きでハマっているだけなのだと思う。

音楽も芸術も同じで、努力する能力より好きになる能力のほうが、はるかに大事だ。

努力する能力があるだけでは、二流のスポーツ選手や芸術家にしかなれない。

ものすごく好きになる能力があれば、一流になれる。

「好きになる」というのは「ハマる」ということ。

これもまたADHDの特質のひとつ「過集中」なのである。

外部からの刺激で集中するのではなく、勝手に集中する力、それこそが、「根」なのである。  成毛眞氏(前マイクロソフト日本法人の社長)

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