使ってこそ生かされる
2019.05.07
けちん坊(ぼう)の人がいて、自分の持っている物を全部金にとりかえ、
その金塊(きんかい)を壁の下に埋めてかくしておきました。
そして時どき掘りだしては独(ひと)りよろこんでいました。
ところがこれを見た近所の人が、けちん坊の留守に、その金塊を盗んでしまったのです。
そんなこととは知らないけちん坊が帰ってきて、いつものように壁の下を掘ってみると、
すっかり空っぽになっていました。
おどろいたけちん坊は髪をふり乱し、狂気のように泣きわめきました。
そこで、近所の人がけちん坊をなぐさめて言いました。
……そんなに悲しみなさるな。
石を拾ってきて同じところに埋めなさい。
金が埋まっていると思えば、それでいいでしょう。
あなたは金があった時でも、それを使わなかったのだから。
(イソップ物語)