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社長のつぶやき

天使と乞食

2019.04.15

いつもよく働く靴屋さんのもとへ、あるとき天使が乞食の姿になって現れました。

靴屋さんは乞食の姿を見ると、うんざりしたように言いました。

「おまえが何をしにきたかわかるさ。

しかしね、ワシは朝から晩まで働いているのに、家族を養っていく金にも困っている身分だ。

ワシは何も持ってないよ。ワシの持っているものは二束三文のガラクタばかりだ」

そして、嘆くように、こうつぶやくのでした。

「みんなそうだ。こんなワシに何かをくれ、くれと言う。

そして、今までワシに何かをくれた人など、いやしない…」

乞食は、その言葉を聞くと答えました。

「じゃあ、私があなたに何かをあげましょう。

お金に困っているのならお金をあげましょうか。

いくらほしいのですか。言ってください」

靴屋さんはおもしろいジョークだと思い、笑って答えました。

「ああ、そうだね。じゃ、100万円くれるかい」

「そうですか、では、100万円差し上げましょう。

ただし、条件がひとつあります。100万円の代わりにあなたの足を私にください」

「何?冗談じゃない!この足がなければ、立つことも歩くこともできやしないんだ。

やなこった、たった100万円で足を売れるもんか」

「わかりました。では、1000万円あげます。

だだし、条件が一つあります。1000万円の代わりに、あなたの腕を私にください」

「1000万円!?この右腕がなければ、仕事もできなくなるし、

かわいい子どもたちの頭もなでてやれなくなる。つまらんことを言うな。

1000万円ぽっちで、この腕を売れるか!」

「そうですか、じゃあ1億円あげましょう。その代わり、あなたの目をください」

「1億円!?この目がなければ、この世界の素晴らしい景色も、

女房や子どもたちの顔も見ることができなくなる。駄目だ、駄目だ、1億円でこの目が売れるか!」

すると乞食はいいました。

「そうですか。あなたはさっき、何も持っていないと言ってましたけれど、

本当は、お金には代えられない価値あるものをいくつも持っているんですね。

しかも、それらは全部もらったものでしょう…」

靴屋さんは何も答えることができず、しばらく目を閉じ、考えこみました。

そして、深くうなずくと、心にあたたかな風が吹いたように感じました。

乞食の姿は、どこにもありませんでした。

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