千年もつ釘(くぎ)
2019.04.11
最後の宮大工であり、技術の人間国宝と言われる、松浦 昭次氏の
心に響く言葉より
鉄の釘も昔の釘のほうがいいから、
作ってくれる職人が必要です。
釘は金物屋に行けばいくらでもありますが、
今の釘は使えないんですよ。
釘を使う当初の強度面では大丈夫なのですが、
いかんせん、もちが悪い。
もってもせいぜい五十年でしょう。
百年もったという例がない。
その前にみんなボロボロに錆(さ)びてしまう。
しかし、昔の釘なら五百年でも、千年でも、もつ。
その実例もたくさんある。
それが「和釘(わくぎ)」と言われる釘です。
だから文化財にはどうしても和釘がいるんです。
和釘はふいごで炭を吹いて溶かした鉄を、
何度も鍛えて釘にしています。
軸(じく)の形は角張(かくば)っていて
角釘(かくくぎ)とも言います。
この和釘に含まれている不純物は
今の釘よりも多いのです。
しかし、和釘の耐久性は
今の釘よりもはるかにすぐれている。
見た目はどちらも鉄なのですが、
たいへんな違いがあるのです。