時にはぼーっと
2019.01.23
『花のお寺と呼ばれる鎌倉のあるお寺の和尚さんのもとに、あるとき、悩みを抱えた男性がやってきました。
男性の胸の内を聞いた和尚さんは、「わしに答えはようわからんから、そのへんでゆっくりしていきなさい」と庭を指差しました。
その寺の庭園は、世界遺産に指定されている京都の苔寺や天龍寺の庭園を手がけた、夢想国師(むそうこくし)によって作られた立派なもの。
男性は和尚さんにいわれた通り、朝から夕方まで庭を眺めてすごしました。
日も暮れかけた頃、「和尚さん、答えがわかりました」といって、寺を後にしたそうです。
私にも似たような経験があり、寺を訪ねてきた40代後半の女性が、夫を亡くし、仕事も失い、生きているのが嫌になったというので、「とりあえず座りましょう」とうながして、しばらく一緒に庭を眺めていました。
小一時間すると、その女性はすっくと立ち上がり、「もう大丈夫です」と、清々(すがすが)しい笑顔で帰っていかれたのです』